#03 Masanobu Ando / Photographer Actor
アーティストやクリエイターたちとのコラボレーションや密な関わりは、クリエイティブに真摯に向き合うことができる、特別で大切な時間です。彼らの前向きなプライドやメンタリティに共感し、声に耳を傾けること。それを多くの人に届けることで、WIND AND SEAは、常に進化をしています。
#03は、安藤政信。俳優としてではなく、写真家としての理想の自分。
シンディ・シャーマンの
演じて撮る行為が
自分の感覚と似ていて
写真家を目指したのはまだ20歳とか、21歳だった頃。『キッズ・リターン(1996)』に出させてもらって、プロの人に撮られるって経験をしてから撮る側に興味をもつようになって。で、ある時のインタビューで取材が終わった後に、カメラマンの人からシンディ・シャーマンの写真展に誘われて一緒に行ったんです。それが転機でしたね。
その時に見たシンディ・シャーマンの作品は、シチュエーションをきちっと決めて、セルフポートレートで撮影するスタイル。自分で演じて撮るって行為が、その時の俺の感覚とすごくリンクしている気がして。それから俺も地元の川崎の工場とか、色々な場所でセルフポートレートを学びながら作品を撮り溜めました。ある映画祭の時に、それを(北野)武さんに見てもらったことがあって、その時に「シャッターは誰でも押せるけど、そのタイミングだったりとか、押すってことをどれだけ大切にするか」ってことを言われたのが、すごく覚えていて。
仕事柄、いろいろなカメラマンと会う機会が多いから、ライティングについてとかいろいろ話を聞いたりしていたけど、本当に教えてくれる人はいなくて、唯一親身になってくれたのがタジー(田島一成)さんだった。ライティングだけじゃなく、仕上げることの大切さとか、技術的なこと以外もいろいろ教えてくれた。タジーが撮ってきた広告写真という、たくさんのレイヤーの中から、例えばここが沈んじゃったから、どうライトを足していくかとか。だから今でも言うことを聞ける唯一の人というか。いろんな現場に呼んでもらったし、人もたくさん紹介してもらったり。めちゃくちゃ感謝している。
感謝はしているけど、強烈に厳しい人だし、ものすごくきちっとした人、ちゃらくないし。だからタジーに写真を見られるのは一番緊張するから、この前のブックマークでの展示の時も声はかけなかった。けど、オープニングの日に目の前から歩いてきて、あれって。やっぱりすごく丁寧に見てくれて「美しく撮れてる」って褒めてくれて。マーク・ジェイコブスの1回目(『憂鬱な楽園for MARC JACOBS』/2022年)と2回目(『MARC JACOBS THE FUTURE FLORAL 憂鬱な楽園』/2024年)の写真展は、本当に大切に撮らせてもらったし、すごく満足している。あと、今年はラフォーレの仕事で、自分の写真が大きく飾られて、キャンペーンのように発信されているのを見てすごく嬉しかった。
単焦点のレンズで
人との距離感を考える。
歪む写真は好きじゃない。
自分が被写体のときは枚数を絞ってシャッター切ってくれる人がいい。でも自分が撮るなら永遠に撮っていたいって思うから、理想とする写真家のスタンスは立場によって乖離しちゃうかな。自分は基本的に撮りたい人しか撮っていないから、その人への興味は既にすごくあるわけ。でもコマーシャルや広告だと自分がこれじゃなければ撮らないってことはほぼないから、どうにかして現実と擦り合わせていかなきゃいけない。クライアントのことを100%飲み込んで、100%でちゃんと返す技術ってすごいことだと思う。
機材についてはあまりこだわりはないけど、レンズは50mm以下には落としたくないって気持ちがある。歪む写真が好きなじゃないのもあるし。ズームレンズも使わずに、単焦点だけでずっとやってるから。50mmでライブを撮るとすごく寄らないといけないけど、一緒に舞台に上がって撮ったりすることもあるからね。やっぱり人との距離で撮ってる感じ。
20代のときからずっとだったから、逆にフィルムに特別なこだわりはないね。現像して、友達の家でプリントをしにいくみたいなことずっとやってた。でも今はなかなかネガの種類もないし、現像も高いから、いまはデジでいいんじゃないかとも思う。たまにクッキリし過ぎたピントが気持ち悪いな、とか思ったりするけど、そう言う時は輪郭をぼかしてレタッチして仕上げてる。
写真を撮っている時も
ずっと撮り続けたいと
思いながら撮っている。
最近はライブの撮影をしているんだけど、昔はそんなことするなんて考えてもなかった。BAD HOPとJJJのライブを遊びにいった時に、すごいエネルギーを感じたし、お客さんのいい反応や感情を見て、なんか撮りたいなと思ってからすごくハマった。それから色々なアーティストと繋がって、ライブに呼んでくれるようになって、写真を撮らせてもらうように。ライブはめちゃくちゃ気持ちがいい。1日に物語があるしね。ファッションショーの撮影も似たところがあるけれど、何もない状況から作り出して、アーティストが来て、リハやって、終わって、本番前のナーバスな姿から、パフォーマンスして、それが終わって、アフターパーティで緊張感が解き放たれて。そういう変化を1日中追っているとすごく面白い。やっぱり感情を撮りたいから。いままで台本を読んで演じ続けてきた自分がいるからこそ、感情を物語にしたいなって思う。音楽はずっと撮り続けたい、本当に気持ちがいいものだし、素晴らしいと思うから。
比重としては俳優よりも写真家として活動したいって雰囲気に今はなってる。100%くらい。俺って写真を撮っている時も、ずっと撮り続けていたいって思うくらい、写真が本当に好きだと思う。撮ることに飢えているんだよね。でも、プロってみんなそういう気持ちだと思うから