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THE VOICE OF CULTURE
#04 Yuichiro Wakamatsu / Tangerine
アーティストやクリエイターたちとのコラボレーションや密な関わりは、クリエイティブに真摯に向き合うことができる、特別で大切な時間です。彼らの前向きなプライドやメンタリティに共感し、声に耳を傾けること。それを多くの人に届けることで、WIND AND SEAは、常に進化をしています。
#04は、愛媛県宇和島市でみかん農家としてブランド〈Tangerine〉を手がける若松優一朗。

農業と観光を一緒に盛り上げる。

満足のいく形で

農家の道に進むために。

農業を目指すきっかけになったのは、大学での授業でした。都市部は話題の食べ物や新しい建物ができてはなくなりを繰り返しているけど、自然は観光産業にとって価値があると学んだんです。実家の周りはみかん農家だらけだから、収穫時には畑のある山が鮮やかなオレンジ色に染まったり、春頃には一面みかんの花で真っ白になったりして、一番持続性があって、環境を破壊しない。結びつかないと思っていた農業と観光を一緒に盛り上げるということが、とても楽しそうだと思ったんです。
帰省すると必ず、じいちゃんとばあちゃんの手伝いをしていたんですが、農家も高齢化が進んでいて、食を支えている若者が少なすぎるって感じて。都会は若者が楽しめるものがたくさんある。東京にいると人とのつながりやカルチャーも楽しいし、それは僕自身も好き。だけど生きていく上で『食』が一番大切だからこそ、高齢者が支えている状況ではなくて、もっと若い人たちが盛り上げていけるような環境にしたい。だから農業をやろうって決めたんです。
ただやるだけだと面白くないので、東京での経験を愛媛に持ち帰れるようにしようと、洋服屋やコーヒー店で働いたり、食べてくれる人と直接関わることのできるケータリングの仕事をしたり。とにかく自分が好きなもの、興味のあることをとことんやりました。全ては満足のいく形で農業をするためでした。

届きそうで届かない人に

『食』の良さを届けたい。

東京でルームシェアしていた友達に「将来は地元で農業をやりたい」と話をしたら、「じゃあブランドを作ったら楽しいんじゃない」と言われたことから〈Tangerine〉がスタートして。まずは全く農業と関係ないアンダーウエアを制作したんですが、単純に自分が欲しいものを売りながらこれからみかん農家になることを意思表示していくきっかけ作りでした。
毎月第一土曜日と日曜日に開催されていた古着のイベント「RAW TOKYO」に友達4人でキッチンカーを借りてケータリングを行うことになったんです。実家からみかんを送ってもらい、ジュースにして販売したら、反応がとてもよかったので、今でもイベント出展は積極的に行なっています。それに「美味しい」っていう声を聞いて、その言葉で「また農業頑張ろう!」って思える。愛媛に戻ったら「あの人が美味しいって言ってくれたからもっと頑張ろう!」みたいな。その繰り返しが僕のやりがいでもあって、マインドセットできる原動力になっていますね。
東京で洋服屋として働いている時は、デザイナーが次々と作っていく新しい服たちをどういう気持ちで売ったらいいか、迷う時期があったんです。でも今は〈Tangerine〉の活動を通じて、みかんを育てる過程からお客さんに届けるまで、全ての工程に自分は関わることができる。
本格的に農業を始めて4年目になります。先祖代々から受け継がれてきたみかんの木があるので、収穫を経験することができていますが、みかんの木を一から育てると5年はかかる。まだじいちゃんとばあちゃんに助けられてばかりですが、世代交代も考えていかなければいけない。〈Tangerine〉としてはありがたいことにさまざまな飲食店でみかんジュースを取り扱ってもらっている。自分たちができる範囲の量と本数を作って、死ぬまでずっと『食』と関わっていける持続性のある活動にしていきたい。そのためにはまずみかん農家として僕自身が一人前になれることが目先の目標ですね。
その先は農業に縁のない人や食にあまり興味のない、食べることに対する喜びを知らない人に届くような活動をしていきたい。〈Tangerine〉もただのみかんジュースかもしれないけど、ラベルをグラフィカルにして、アート好きにも手に取ってもらえたり、贈り物としてのジュースを選んでもらったり。そういう届きそうで届かない人たちに僕は『食』の良さを届けていきたいと思っているんです。
BOSTON CELTICS × WIND AND SEA CLOSES IN
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