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#08 POS(De La Soul)/ MC&Producer

#08 POS(De La Soul)/ MC&Producer
アーティストやクリエイターたちとのコラボレーションや密な関わりは、クリエイティブに真摯に向き合うことができる、特別で大切な時間です。彼らの前向きなプライドやメンタリティに共感し、声に耳を傾けること。それを多くの人に届けることで、WIND AND SEAは、常に進化をしています。

#08はDe La Soulのポス。ニュースクールの幕開けに新しいムーブメントを打ち出し、ヒップホップの多様性を広げたレジェンドグループの、設立時代のエピソード、そして音楽的な価値観について。

自分たちの経験をリリックに

反映させることで常に進化してきた。

変わらないのは創造への欲求だけ


デ・ラ・ソウルは、自分とデイヴ(デヴィッド・”トゥルーゴイ・ザ・ダヴ”・ジョリクール)、あとスクールメイトだった友人たちとで結成したんだ。俺はDJ、デイヴはビートボックス、そして他のメンバーはMCだった。その後、他のメンバーはそれぞれの道に進んだけど、私とデイヴはクールな繋がりを感じ、自分は二人を「フロム・ザ・ソウル(魂から)」というと名づけたんだ。自分たちがすることすべてに心と魂が繋がっていると思っていることを伝えると、デイヴは、「クールだね。ちょっとスパイスを加えて『フロム・ザ』の代わりに『デ・ラ』はどうだい」と提案してきた。そうして俺たちは「デ・ラ・ソウル」になったんだ。
DJ RED ALERTやMARKEY MARLといった有名なNYのDJたちが、デ・ラ・ソウルの曲をかけてもらいたいとずっと思っていた。とにかく自分たちの音楽がラジオで流れることを夢見ていたんだ。

俺たちのヒップホップのスタイルは、俺たちが取り入れてきた情報や知識とともに進化していった感じかな。最初のアルバムは、ティーネイジャーの頃の考えや野望や経験で作ったものだ。それから世界中をツアーする機会に恵まれて、いろいろな世界を見ることができた。例えばヨーロッパは思っていたものと全然違っていたしね。多様な価値観や、楽しかったこと、見たものをそれぞれのアルバムのリリックに反映していった。

 

だから俺たちの進化は、自分たちの経験の中で見てきたものに基づいている。もちろん本を読むことも。その中で変わらなかったことは、クリエイティブでありたいという意欲かな。いろいろなことに挑戦したい欲は、今も持ち続けている。

人々は「デ・ラ・ソウル」を「オルタナティブ」と解釈するけど、それはメディアや他の人たちがつけたものだ。いわゆる「普通」や「規範」とされているものと違うことに対して「オルタナティブ」と表現することはわかる。けれど、意外に思われるかもしれないが、俺たちは(BIG DADDY)KANEやSLICK LICKやN.W.Aたちの自己表現の仕方とは違っていたかもしれないけれど、すごく気が合っていた。そしてICE CUBEや他のアーティストのウィット、歌詞のレベルの高さも理解していたんだ。

一方で、外から見ても自分たちのスタイルに合うと思われる奴らは、A TRIBE CALLED QUESTやJUNGLE(BROTHERS)、それからARRESTED DEVELOPOMENTやPHARCYDEとかね。でももっと深く、自分たちのグループを見ると、メンバーそれぞれにも内面的な違いがあったこともわかった。だから「デ・ラ・ソウル」としての世間のイメージについては、まったく気にすることはなかったかな。

現在も、「デ・ラ」を結成した時となんら変わらないし、世の中の音楽だって昔と今もそう変わっていないと感じるんだ。ただ、バランスが必要な時代だね。俺たちの頃は、俺たちみたいな人はほとんどいなかった。だからレコード会社にリトマス試験紙のように反応して、注目されるきっかけになった。トライブとか、他のグループが注目されるようになったのは、トミーボーイが俺たちとやったことを参考にしたからだと思う。

ただ、今は音楽のリリース方法も増えている現状で、メジャーという一つの括りの中から違う表現や考え方を持っている人を見つけていくしかないんだ。ストリートについて歌っている人もいれば、知的なことを歌詞にするKINETICSみたいなやつらもいる。すごくシンプルに表現する人もいるし、ウィットに富んだやつらもいる。良いネガティブなものもあれば、悪いポジティブなものもある。すべてはバランスなんだ。

多様化の時代のメジャーとは?

その答えが見つからない限り

オルタナティブは見つからない


昔の自分たちのような、現在におけるオルタナティブであるかを判断するのがとても難しい。自分のプロデュースをすべて自身でやって、ステレオタイプといえるものに独自のヒネリを加えている人をどう見るか。だけどこれだけ音楽が増えて、受け取り方もたくさんある中で、そもそもメジャーとは何かという問題になってくる。そして、メジャーと言われている奴らが、メジャーではない奴らを手を組んでいる時代だからね。かつてはグライムがオルタナティブな音楽と言われていたし、ドリルがそう見なされていたかもしれない。そしてヒップホップそのものが多くの人々に認知されて、メジャーな存在になっている中で、現在のオルタナティブを定義するのはとても難しいことだね。

俺たちのファッションはとても自由なものだった、デ・ラの初期は、自分たちよりも先を走っていたアーティストに影響を受けていた。RUN-DMCはもろんそうだし、TREACHEROUS THREEやWHODINIとか、Rakimなどもそうさ。一時期はゴールドのチェーンも持っていたけど、自分たちの好きなように表現しようと思ってからは、親父のズボンや昔のベルボトムのパンツなんかを引っ張り出しては、裾を細くしたりして、当時のイケてるスニーカーと合わせていたりしたさ。

大事なことは自由でいること、そしてクリエイティブでいることだと思う。いつからか、内面的なものが外面的なものよりも大事になった。ティンバーランドのブーツや、普通のリーバイスのジーンズを穿いて、ピースマークが描いてあるクールなTシャツを合わせていたんだ。

何もかもがいつもシリアスで、ギリギリである必要なんてないんだよ。もっと自由奔放で、とてもアーティスティックであるべきなんだ。俺たちとWIND AND SEAとのコラボレーションのようにね。


POS(De La Soul)/ ポス(デ・ラ・ソウル)
1969年8月17日生まれ、ニューヨーク出身。デ・ラ・ソウルのMC兼プロデューサーとして活動。グループ内ではユニークなフローと知的かつ緻密なリリックで知られる実力派。ネイティブタンの一派として、ヒップホップにピースフルなユーモアと多様性をもたらしたレジェンド。最近のお気に入り曲は「All Good? feat. Chaka Khan」。リリース25周年となる名作アルバム『Art Official Intelligence: Mosaic Thump』に収録中。


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